
じん肺内科外来
|
昭和30年に炭坑労働者のじん肺予防と治療のための病院として開設され、現在に至っています。アスベスト疾患ブロックセンターにも認定され、アスベスト関連疾患の診療もおこなっています。
じん肺検診の充実、診断能力の向上によりじん肺合併肺がんの早期発見(過去10年のじん肺症に発症した肺がん中、早期肺癌が45%)や、治療レベルの向上により、当院におけるじん肺患者の平均寿命は、本邦の成人男性の平均寿命と変わらなくなってきています。
当院には職業性呼吸器疾患センターが併設されており、じん肺や石綿関連疾患に関する臨床研究を行っています。現在は労働者健康安全機構が実施している第4期労災疾病等研究・開発、普及事業 研究テーマ「じん肺」において研究の中核病院として研究を推進しています。
第3期には「よくわかるじん肺健康診断」を発刊し、日本各地で普及活動を実施してきました。最近では、同冊子の英文誌を発刊し、世界に誇れる日本のじん肺検診や補償制度を紹介しています。発展途上国の参考になる事を期待しております。
平成13年度には35万人と減少した粉じん従事作業者が平成30年には60万人を超えました。これらの労働者に対し、じん肺健康診断が必須なため、じん肺検診を行える産業医の育成が急務となっています。じん肺診断技術の伝達、普及が今後益々必要となると考えます。
また、液晶画面に使用されるインジウム、航空機産業等で用いられるベリリウム、さらに半導体等で用いられる純度の高い珪素など新たな素材による肺障害も報告され、これらの診断、治療の模索が続けられています。
さらに、石綿関連肺疾患は今数十年現在と同様な状況が続くと思われます。中皮腫、石綿肺がん、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚など、診断のための要件や基準があります。これらの普及事業も大切だと考えています。
じん肺は発展途上国においても大きな問題となっており、今後も我が国で蓄積されたじん肺検診、診断、治療などの知見が果たす役割は大きいと思われます。
第1期に、「画像でみる今日のじん肺症例集」、「経時サブトラクション法」、「じん肺におけるFDG,MET-PETの研究」、「胸膜プラークの胸壁3 dimensional CT表示」などを出版し、一般医家向けに研究成果の普及を行いました。
第2期には、じん肺に合併する肺がんの診断法に関する研究、さらにはじん肺管理4患者の病態に関する研究を報告してきました。
第3期は、「よくわかるじん肺健康診断」、「じん肺の合併症 続発性気管支炎・続発性気管支拡張症の診断・治療と症例」を発刊しました。さらに、ANCA関連血管炎との関係を調べて報告しています。
現在の第4期は、第3期の研究成果の普及事業とともに、じん肺大陰影と肺がんとの鑑別をMRI検査でできないかとして「MRIによる大陰影の検討」、じん肺に間質性肺炎を合併する頻度が高いためCTによるその実態調査、さらに続発性気管支炎の診断基準である膿性痰の客観的測定法の検討をおこなっています。
また、「よくわかるじん肺健康診断」の英文誌が発刊されました。海外の研究者や臨床家の手に渡り、本邦のじん肺補償制度を取り入れその素晴らしさを認識していただけたらと思います。
じん肺法のバイブルである1978年に出版された労働省安全衛生部衛生課編「じん肺診査ハンドブック」が1987年以降絶版で、じん肺診療に従事する医家からその後のじん肺の認定基準をいれた改訂版が待ち望まれていました。今回の斑のメンバーで執筆し、内容に統一性をもたせ、重複を少なくして、実際に健康診断書を記入する際に役立つように作成しました。
産業医学振興財団 平成29年5月1日発行 定価1,800円+税
- じん肺患者における好中球細胞質抗体(ANCA)陽性率の検討 ―多施設共同横断的研究. 大塚義紀、宇佐美郁治、水橋啓一ら..日職災害会誌 2018;66:259-262.
- じん肺(石綿肺を除く)と石綿肺患者が入院加療を要した併存症に関する調査 宮本顕二、大塚義紀、五十嵐毅ら. 日職災害会誌 2018;66:441-446.
- 病職歴データベースによるじん肺患者におけるANCA(石綿肺を除く)好中球細胞質抗体)関連血管炎・腎疾患発症頻度の検討 大塚義紀、宇佐美郁治、水橋啓一ら. 日職災害会誌 2018;66:259-263.
- Significant relationship between the extent of pleural plaques and pulmonary asbestos body concentration in lung cancer patients with occupational asbestos exposure. Yusa T, Hiroshima K, Okamoto K, et al. Am J Ind Med 2015;58:444-455.
5. アスベスト以外の粉じんによる呼吸器疾患
大塚義紀、木村清延、中野郁夫. モダンメデイア 2015;61:47-54.
日職災害会誌 2018,66:441-446.
6. じん肺症におけるアディポネクチンと炎症性マーカーについての検討
五十嵐毅、宇佐美郁治、岸本卓巳ら. 日職災害会誌 2014,62:184-188.
7. じん肺健康診断判定基準の変更における妥当性について.
五十嵐毅、宇佐美郁治、岸本卓巳ら. 日職災害会誌 2014,62:233-237.
主任研究者 | 北海道中央労災病院 院長 | 大塚 義紀 |
分担研究者 | 旭労災病院 呼吸器科部長 | 加藤 宗博 |
岡山労災病院 アスベスト疾患研究・研修センター所長 | 岸本 卓巳 | |
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野教授 | 芦澤 和人 | |
川崎医科大学 放射線医学教授 | 加藤 勝也 | |
富山労災病院 アスべスト疾患センター長 | 水橋 啓一 | |
北海道中央労災病院 名誉院長 | 木村 清延 | |
共同研究者 | 旭労災病院 院長 | 宇佐美 郁治 |
北海道中央労災病院 第3内科部長 | 猪又 崇志 | |
旭労災病院 健康診断部部長 | 横山 多佳子 | |
岡山労災病院 腫瘍内科部長 | 藤本 伸一 | |
北海道中央労災病院 中央検査部長 |
植木 進一 | |
北海道中央労災病院 中央放射線部長 | 木村 文治 | |
研究総括責任者 | 北海道中央労災病院 名誉院長(顧問) | 宮本 顕二 |