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北海道岩見沢市4条東16丁目5番地
病気のはなし
認知症
余計なお世話が肺炎を作る

 「いまどき肺炎で亡くなるなんて!」と、皆さんは考えていませんか? しかし、死因としての肺炎は急増し、2011年に死因の3位だった脳卒中を追いこし、その後も増え続けています。

肺炎はありふれた病気です。その治療薬である抗生剤は日本中どこにでもあります。そう考えると,やっぱり,いまどき、肺炎で死ぬなんて!と思いますね。

 実は、肺炎で亡くなる方の多くは高齢者です。特に進行した認知症の場合、肺炎は必発です。なぜ肺炎が多いのでしょうか? 高齢者や認知症の人の肺炎の多くは誤嚥によって引き起こされるからです(誤嚥性肺炎といいます)。

ここで嚥下の仕組みを考えてみましょう。皆さん,水を一口、口に含んでください。水が口の奥に送られ,ゴックンと飲み込むとき,水は一気に食道へ送られます.この最後のゴックンの後は、脳が自動で調節し、飲み込んだ水が肺(気管)に行かないようにしています。高齢になるとこの調節機能が低下します。特に認知症になると,脳が委縮してこの自動調節がうまく出来ません.そのため、口の中の食べ物の一部が食道ではなく肺の中に入って肺炎を起こすのです。仮に肺に食べ物が入っても、若い人であれば、むせて、食べ物を咳と一緒に出します。高齢者、中でも認知症の人は、この咳反射も低下しています。つまり、誤嚥しやすい、誤嚥しても吐き出せないため肺炎が起こるのです。誤嚥性肺炎は体に抵抗力があれば、抗生剤で治すことはできます。しかし、その根本原因を治すことはできないので、誤嚥性肺炎を繰り返し、結局は亡くなります。

 さらに、誤嚥は食べ物の一部が肺に入ることだけではありません。口の中の雑菌が唾液と一緒に、気が付かない間に、眠っている間に、気管から肺の中に流れ込みます(不顕性誤嚥といいます)。これが誤嚥性肺炎を起こす最も大きな理由です。そのため、誤嚥性肺炎を繰り返す人は、寝たきりで歯も自分で磨けない人に多いのです。

 食べ物を誤嚥する人には経管栄養を行えば誤嚥が防げると思うかもしれません。しかし、経鼻胃管栄養は胃に管が入っていることで食道と胃の境目のしまりが悪くなり、胃にいれた栄養剤が肺へ逆流しやすくなります。そのため、誤嚥性肺炎がよく起こります。胃ろうを造っても、唾液の誤嚥や、食道や胃からの胃内容物逆流による誤嚥を防ぐことはできません。結果として、誤嚥性肺炎は起きます。

 このように高齢者や進行した認知症の人は肺炎を繰り返します。誤嚥性肺炎の治療が終わって退院しても、翌日、誤嚥性肺炎で入院してくる人が後を絶ちません。まるで、いたちごっこです。

私達も、このまま繰り返し治療することが本当に患者さんにとって良い事かどうか、迷う事がしばしばです。なぜなら、だんだん体の抵抗力がなくなり、抗生剤が効かなくなって、結局は亡くなるのが分かっているからです。しかも、認知症の人は何故抗生剤の点滴をされるのか理解出来ません。そのため、点滴の針を抜こうとするので、点滴の間中、手足が縛りつけられます。肺炎の治療中は食事摂取や経管栄養を行うと誤嚥が起こるため、それらを中止して点滴を行います。結局、一日中点滴して、一日中拘束することになります。

このような現実を見据え、日本呼吸器学会は新しい肺炎のガイドラインを2017年5月に発表しました。そのなかに、高齢者や認知症で誤嚥性肺炎を繰り返す場合は、患者やその家族、そして医療チームで話しあい、ガイドラインから外れても良いと明記されました。つまり、治療からの撤退もやむなしとの見解です。

 今、巷で「誤嚥性肺炎はこうすれば防げる!」というのが流行っています。しかし、それは終末期が近い高齢者と認知症の人の話ではありません。そのような人は、嚥下リハビリができません。私は無理に食べさせないことが最大の予防法と考えています。

 高齢者や認知症の人は終末期になると、食欲がなくなり、誤嚥するようになります。しかし、私たちは最後まで栄養が必要と思っているので、本人がいやがっても無理に食べ物を口に入れます。しかも、仕事に追われているので、早いスピードで入れます。そのため、誤嚥を起こします。つまり、食事介助は本人にとって余計なお世話です。それどころか、本人は肺炎にさせられ、行きたくもない病院に連れて行かれて、縛られて、点滴され、治ったと思って帰ってきたら、また余計なお世話で肺炎にさせられます。虐待です。欧米豪では、無理に食事介助すると老人虐待になります。

 点滴や経管栄養で延命をせず、本人の望む量だけを本人の飲み込むスピードに合わせて食事介助を行うと、ほとんどの人は誤嚥性肺炎を起こしません。もちろん口腔ケアは必要です。

 その証拠に、私がスウェーデンで認知症診療の大家であるアニカ・タークマン医師に、「スウェーデンでは誤嚥性肺炎の人は多いですか?」と聞いた時、きょとんとした顔をしました。その理由は、スウェーデンでは無理に食べさせず、点滴や経管栄養をしない自然な看取りを実践しているので、誤嚥性肺炎が問題にならないからです。

食べたくないのに口に物を入れられたり、管から栄養を入れられたりするのはつらいことです。どんなに頑張っても、死は平等に訪れます。同じ死ぬなら肺炎を起こさず、穏やかに死なせてもらいたいですね。

「認知症を堂々と生きる−高齢者終末期医療・介護の現場から−(中央公論新社)」コラムから

キーワード 誤嚥性肺炎、認知症、高齢者

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内科 宮本顕二
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認知症と水分補給 −水をたくさん飲むと認知症が治る??

 最近、介護施設に入っている認知症の人が心不全で運ばれてくることが多くなりました。一緒に来た職員に飲水量を聞くと、一日1.8ℓ以上を目標にしていると言います。なぜそんなにたくさん水を飲ませるのかと聞くと、「施設の方針だから。水をたくさん飲ませないと認知症が悪くなるから」と言います。高齢者に食事の他にそんなにたくさんの水を飲ませると、心臓に負担がかかり、心不全になります。尿量が増えるためトイレに間に合わず失禁したり、オムツ交換の回数も増えます。そして、無理に水を飲まされる高齢者のつらさと、いやがる高齢者に水を飲ませる職員の負担は相当なものです。なぜそんなことになっているのかと、Googleに"認知症、水分補給"と入れてみました。目に飛び込んできたのは、

  • 脱水状態が認知症の原因に! 
  • 認知症状がひどくなる原因は脱水症状?
    水分摂取で悪化予防・介護負担軽減!
  • 梅○○○○も衝撃 「水分不足で認知症に」と識者が警鐘
  • 水分不足で認知症に!
    毎日1.5ℓの水分摂取が認知症を予防して治す

 なんだかどきっとします。「水を飲めば認知症にならない!」と錯覚してしまいます。

 水分が不足すると脱水になり、ひどくなると意識がぼんやりする「せん妄」が起こります。日付や場所がわからなくなり、つじつまが合わない言動になり、幻覚が出ることもあります。せん妄は認知症の症状によく似ていますが、認知症ではありません。脱水によるせん妄は水分補給で改善しますが、認知症の症状は水分補給では改善しません。認知症は脱水が原因ではないからです。「水分不足で認知症に」は間違いで、「水分不足でせん妄に」が正しいのです。もちろん、認知症の人も水分不足でせん妄になりますから、注意が必要です。

 高齢者は口渇を感じにくいので、自から進んで水分を摂ろうとはしません。そのため、周囲が水分を勧めることが必要です。しかし、問題はその量です。

 高齢者の1日の水分必要量は体重50kgの人は15002000ml (3040ml/kg)です。この数字は食事の中の水分も含んでいます。食事の中の水分量は1日約1000ml/日なので、食事以外の水分摂取量は1800 ml ぐらいが望ましいことになります。11500 ml も飲ませたら体は水分過多になってしまいます。働いている私たちでも、1000 ml ぐらいしか飲みません。

 若い人に比べ、高齢者は脱水になりやすいです。そのため水分補給はせん妄予防のために大切です。しかし、過剰な水分摂取は「過ぎたるは及ばざるが如し」です。認知症介護に関わる方は、正しい知識を持って欲しいです。

「認知症を堂々と生きる−高齢者終末期医療・介護の現場から−(中央公論新社)」コラムから

キーワード 認知症、高齢者、水分補給

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内科 宮本顕二
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早期発見できれば治療可能な認知症もあります

認知症という病気を知っているでしょうか?

みなさんの周りには認知症の方はいらっしゃいますか?

認知症は治らない病気だから、病院に行ってもしょうがないと思っていませんか?

 認知症とは、よく耳にするアルツハイマーや血管性認知症などのことを指し、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたため、さまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことを指します。多くの場合、現状では、根本的な治療法はありません。薬剤治療は認知症の進行をわずかに遅らせる程度です。

 しかし、認知症の症状を示していても治療可能な疾患があります。原因となる病気を適切に診断・治療することで、早期であれば認知症の症状が改善できるものもあります。ちなみに、認知症の患者全体の約1割が治療可能な認知症といわれています。

治療可能な認知症を引き起こす基礎疾患としては以下のような疾患があげられます。

  • 脳腫瘍
  • 硬膜下血腫
  • 甲状腺機能異常症
  • ビタミンの欠乏
  • アルコール依存症
  • 高齢者てんかん
  • 感染症(梅毒、ウイルス性脳炎など)
  • 向精神薬・降圧剤・風邪薬・胃腸薬などの薬剤の不適切な使用

 認知症の症状を示していても治療可能な疾患もあります。上記のような疾患は問診や身体所見、血液検査や頭のCT検査、MRI検査などで診断可能です。できるだけ早い時期に医療機関を受診してみましょう。

総合内科 小林 俊幸

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