唾液が減少すると口腔が乾燥した状態(ドライマウス)となります。乾燥感だけでなく、口の中が痛い、ヒリヒリする、ネバネバする、食べにくい、飲み込みにくい、話しにくい、味が分かりにくい、などの症状を感じることもあります。口腔が乾燥すると虫歯、歯周病、口腔カンジダ症、口臭などが発症・悪化しやすくなります。口の中にはたくさんの常在菌(細菌やカビなど)が生息しており、その中には虫歯や歯周病などと関係する細菌もありますが、唾液中には抗菌作用のある物質が含まれており、それらをある程度抑制しています。口腔乾燥症の原因には以下のようなものがあります。
シェーグレン症候群は唾液腺の機能が低下する代表的な疾患です。病原体に作用すべき免疫が自分の体の一部である唾液腺や涙腺を攻撃してしまい、唾液腺・涙腺の機能が低下して唾液や涙の分泌が減少します。40~60歳代の女性に発症しやすく、女性が男性の約14倍と圧倒的に多いのが特徴のひとつです。
唾液分泌は自律神経(交感神経と副交感神経)によって調節されていますが、唾液分泌は主に副交感神経により促進されます。薬の副作用によって副交感神経が抑制され、唾液分泌の減少が起きることがあります。
口呼吸をしている場合は、口の中の水分の蒸発が多くなり口腔乾燥が起こります。糖尿病、発熱、飲酒、運動などによる脱水でも口が乾きやすくなります。
口腔乾燥でお困りの方は、当科を受診してみて下さい。
歯科口腔外科 堀川雅昭 |
がんの骨転移や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療薬として、抗がん剤(ゾメタ、ランマーク注射薬)、ビスフォスフォネート薬(ボノテオ、ボナロン、ベネット、リカルボン経口薬)が多くの患者さんに使用されています。最近、これらの薬剤と顎骨骨髄炎や顎骨壊死との関連が報告され、抜歯時に発症することが多いとされています。顎骨壊死は重い副作用の一つで、口の中に腐骨が露出したままの状態が続きます。
当科では、このような薬剤関連顎骨骨髄炎や顎骨壊死に関して、口腔外科学会などから公表されているガイドラインに基づいて、予防、診断、治療を行っています。骨粗鬆症薬については、内科、整形外科などの処方医と連絡をとって休薬を依頼します。勝手に患者さんが自己判断で休薬してしまうのは危険です。抜歯などの手術時期は慎重に判断し、安全に抜歯を行い、骨髄炎にならずに良好な結果を得ています。また、すでに骨髄炎や顎骨壊死となった患者さんに対しても、外来通院で抗菌薬などの薬物療法や洗浄処置を行い、患者さんが口から食事をきちんと摂取できるようにしています。
もともと、顎骨骨髄炎は薬剤と関係のない骨髄炎の方が圧倒的に多く、虫歯や歯周病を放置した20歳代の若い患者さんのなかにも、すでに骨髄炎になっている人もいます。また、合わない義歯を使用して骨髄炎になっている患者さんもいます。顎骨骨髄炎の症状は、歯肉や顎の痛み、腫れ、しびれ、歯の浮いた感じ、歯肉からの排膿などですが、骨髄炎になってもあまり自覚症状がなく、X線写真で発見される患者さんもいます。
このような症状のある人、がんや骨粗鬆症で骨の薬を投与されていて歯の悪い人は、かかりつけの歯科に受診して下さい。また、かかりつけの歯科がない方は、当科に電話で予約していただければ直ちに診察いたします。その際は服用している薬がわかるものを必ず持参して下さい。