当院では1990年頃から下肢閉塞性動脈硬化症や大動脈瘤の治療を行って来ました。手術とカテーテル治療の件数は1000件を超えています。
最近は血管内治療(カテーテル治療)が多くの病院で行われるようになって来ましたが、当院では1994年に初めてバルーン血管拡張術を行いました。さらに1997年にはバルーンで拡張した狭窄部を補強するためステントを初めて留置しています。ステント留置は現在ではカテーテル治療の標準治療となっています。
その後、数多くの患者さんの治療を行い、十分な経験を有しています。
閉塞性動脈硬化症の治療は、運動療法、内服治療、カテーテル治療、手術を組み合わせて行う必要があります。カテーテル治療と手術ではカテーテル治療の方が優れていると思われがちですが、それぞれ長所、欠点があります。当院ではどちらの治療もできますので、患者様に最も適した治療方法を選択できます。
閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化によって主に下肢の動脈が狭窄したり閉塞したりして起こる病気です。下肢の動脈とは足だけではなく大動脈も含まれます。上肢の閉塞性動脈硬化症は稀で、ほとんどは下肢の病気です。
閉塞性動脈硬化症の重症度はFontaine分類と呼ばれる分類法で診断されることが一般的です。
Fontaine 1度(軽症) 足のしびれ感、冷感。
Fontaine 2度(中等度) 歩行すると下肢の痛みや重苦しい感じがでる。少し休息すれば痛みは消失します。間欠性跛行といいます。1度と2度の症状は腰椎の病気でもみられます。
Fontaine 3度(重症) 足の安静時痛。じっとしていても足や足の指が痛む状態。
Fontaine 4度(最重症) 足の指や足部に皮膚潰瘍ができた状態。
Fontaine3度以上の場合は、最終的に下肢切断となる可能性があります。
外来を受診していただきましたら、まず問診を行います。症状の他に糖尿病、高コレステロール血症や高血圧症が無いか?タバコを吸っているか?等々をお聞きします。
次に下肢の動脈の拍動が触れるかどうか診察します。動脈拍動が良好に触れれば閉塞性動脈硬化症による症状ではないと考え、それ以上の検査はおこなわないことがあります。
脈が弱いか触れないときは、ABIといわれる検査を行います。血圧計と心電図、心音図を組あわせたような器械で、検査の痛みは全くありません。これで病気の程度が推測できます。
この時点で検査が終わることもありますが、症状により動脈の精密検査を行います。精密検査は動脈エコー、造影MR-I、造影CTのうち最適な検査を選択します。造影剤を使う場合は血液検査が必要です。稀に造影剤アレルギーが出る方がいますので、検査の必要性とアレルギーの危険性を比べてどの検査にするか決定します。
ここまで検査を行えば、病気の重症度がはっきりします。糖尿病などの持病や症状の経過、ご本人の活動性、年齢、タバコ等から今後の経過予想もある程度可能です。
今回はここまでとします。治療については次回お知らせしたいと思います。
血管外科 朝田政克 |