中央検査部

中央検査部では心臓リハビリセンターのチームの一員として日々迅速で正確な検査を心がけ業務を行っています。私たち臨床検査技師は行う検査は下記となります。

  1. 検体検査 ⇒ 患者さんから採取して得られた検体の検査 (血液・尿・便・喀痰・心筋病理など)
  2. 生体検査 ⇒ 患者さんに直接接触して行う検査 (心電図・肺機能・超音波検査・運動負荷試験など)

心肺運動負荷試験について下記に説明があります。ご興味ある方はご覧ください。

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心肺運動負荷試験(CPX, Cardiopulmonary exercise testing)

心肺運動負荷試験 (CPX) とは、「呼気ガス分析」を併用して行う運動負荷試験のことをいいます。運動中の酸素濃度・二酸化炭素濃度・換気量をリアルタイムに計測します。CPXは心臓のみや肺のみなど個別の臓器の機能を評価するものではなく、心臓・肺・骨格筋の総合的な機能を評価し、患者さんの体力(運動耐容能)を評価します。

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CPXの目的
運動耐容能の評価

運動耐容能の低下は予後に大きな影響を及ぼすことがわかっています。心筋梗塞や心筋症などで心機能が低下した患者さんでも、リハビリテーションにより骨格筋機能などが改善して運動耐容能を改善させることができれば予後良好となります。CPXで運動耐容能を評価することで運動耐容能が低下した患者さんを早期に発見し、適切な心臓リハビリテーションを指導することが可能となります。

運動処方の作成、生活指導

心臓病患者さんへの主な運動療法は有酸素運動になります。心臓病患者さんに安全で最適な運動プログラムを決定するためにCPXは最も重要な検査です。CPXが実施できない場合に、自覚症状や心拍数に応じて有酸素運動の運動処方をする方法もありますが、自覚症状の感じ方は人それぞれ異なり、心拍数についても心臓病患者さんは心拍数を調節する薬 (β遮断薬など)を内服しているため、正確性に欠けます。CPX検査により下記に述べる嫌気性代謝閾値 (AT, anaerobic threshold)を決定することで、患者さん毎の安全な運動処方が可能となります。

心不全の重症度評価

慢性心不全の重症度分類として、NYHA (New York Heart Association) 分類が最も広く用いられています。NYHA分類は心臓の機能ではなく、息切れや疲労感などの自覚症状がどの程度で生じるかという「身体活動」によって規定されます。このように身体活動レベルが心不全の重症度と密接に相関するのですが、自覚症状による評価方法のため客観性に欠けます。NYHA分類とCPXで測定した運動耐容能は相関することが知られており、自覚症状と心不全の重症度があわない患者さんなどにCPXを行うことで運動耐容能の正確な評価が可能となります。また、CPXにより測定した最大の運動耐容能(Peak VO2 )は心移植の適応評価にも使用されます。

呼吸器疾患患者の評価

当院は炭鉱労働者のじん肺の予防と治療のためのセンター病院として開設されたため、じん肺や慢性閉塞性肺疾患(COPD)など多くの呼吸器疾患患者さんが通院しています。呼吸器疾患患者さんの機能的障害の評価にもCPXは有用です。

息切れの鑑別診断

息切れは心臓病以外にも呼吸器疾患や高齢、骨格筋機能の低下、肥満、精神的要素など様々な原因によって生じます。CPXや呼吸機能検査などを組み合わせて、息切れの鑑別と治療方針の決定が可能となります。

労作性狭心症の重症度評価

心臓カテーテル検査(冠動脈造影)で狭窄があっても、労作時の胸痛がなく冠動脈狭窄が高度ではない場合、実際に心筋に機能的な虚血がなければPCI (経皮的冠動脈インターベンション) によるステント留置は望ましくないとされています。負荷心筋血流シンチグラフィ検査や冠血流予備量比 (FFR, fractional flow reserve) による虚血評価が近年では多数行われており、当院でも実施しています。

心筋虚血に対するCPXの役割として、全身運動ではないため心筋虚血の検出感度は低いですが、冠動脈に狭窄がある安定労作性狭心症の患者さんにCPXを行うことで、どの程度の運動強度で胸痛や虚血性心電図変化が出現するかがわかるため、カテーテル手術や冠動脈バイパス術などの必要性を判定することや、心筋虚血が生じない日常生活レベルの指導などが可能となります。

このようにCPXは非常に多くの有用性があります。岩見沢を含む南空知地域ではこれまでCPXに基づく本格的な心臓リハビリテーションを実施することができませんでした。当院での心不全・心臓リハビリテーションセンターの開設により、地域で完結したリハビリテーションを行うことができるようになりました。CPXは2018年4月から本格稼働を開始しましたが、患者さんからのCPXのニーズも高く、現在は月平均で30~40件ほど実施しています。

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CPXの検査手順

検査は医師・検査技師の立ち会いのもと、マスクを用いての呼気ガス分析を行いながら、心電図、血圧、酸素飽和度を測定しつつ自転車をこいでいただきます。検査時間は準備を含め30分ほどです。

検査の事前準備

動きやすい服装と動きやすい靴を用意してください。また検査前の喫煙、飲酒はご遠慮ください。

検査当日

安静な状態で心電図及び血圧を測定し、呼気ガス分析用のマスクを装着します。

マスク装着の際、隙間などが原因で空気が漏れてしまうと、正確な結果が出ないため、きつくしっかりと装着します。

自転車に乗っていただき、サドル位置の調整、ペダルの装着、手の位置の調整を行います。通常のサドルより高めにしています。高負荷になっていく後半にしっかりと漕げるようにするためです。

検査が開始しましたら、一切の会話ができません。

検査開始後の会話はデータの誤差になりますので、検査終了後マスクを外すまでは体調不良などの緊急の場合を除きお話はしないでください。

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運動準備 3分

自転車に乗っている際の心電図や血圧のコントロールを測定します。

ウォーミングアップ 3分

負荷のかかっていないペダルを3分間漕いでいただき、自転車に慣れてもらいます。

最初の漕ぎ出しはやや重くなっていますので、こちらで手伝います。

漕ぐスピードは一分間に50~60回漕ぐ速さで漕いでいただきます。

エクササイズ 5~10分

ペダルがだんだん重くなっていきます。漕ぐスピードはウォーミングアップと同じ速さを維持してください。

※途中に体調の変化が現れたときは、速やかにお知らせください。

※心電図や血圧に大きな変化が現れた場合は、こちらから中止の指示をだします。

重症の心不全患者さんや急性心筋梗塞の後などを除き、基本的には漕げなくなる限界まで頑張って漕いでいただくことで、最大の運動能力を測定できます。

クールダウン 2分

限界まで漕ぎましたら、こちらから終了の合図を出します。急に運動をやめると心臓に負担がかかり、体調不良の原因となりますので、2分間足を止めずに自転車を漕ぎ続けてください。

リカバリー 2分

足を止めていただき、呼吸や脈、血圧などを落ち着かせます。

心電図や血圧に異常がなければ、終了となります。

CPXの結果の見方

CPXは心臓だけではなく、肺や筋肉の状態を総合的に評価します。嫌気性代謝閾値 (AT, anaerobic threshold)、最高酸素摂取量(Peak VO2)などの運動耐容能指標や、呼吸性代償開始点 (RC point)などのいろいろなデータを取得して、重症度評価や、患者さんにあったその人だけの運動メニューを作成します。

実際に検査を実施すると図①のような結果が得られます。

図①

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得られたデータから図②のような運動療法処方箋を発行します。

図②

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