心臓疾患と中央放射線部との関わりは基本的に診断・治療の領域が大部分を占めています。主な検査としてMRI、CT、エコー、心臓カテーテルがあります。
特に心臓カテーテル検査においてはよく言われる「チーム医療」という言葉のとおり、医師を中心に看護師、臨床検査技師、臨床工学士、そして私たち診療放射線技師がそれぞれの役割を担い、そしてお互い協力しながら検査・治療にあたっています。
各検査の簡単な説明がありますので興味のある方はご覧ください。
MRIとは強力な磁石を備えた筒状の装置の中に体を入れ、弱い電波を照射して体に含まれる水素の原子核にエネルギーを吸収させます。そして、その電波の照射を止めると吸収されたエネルギーは放出され、その時に得られる信号をコンピューターで画像化しています。
当院では心筋梗塞の指標として遅延造影効果を用いたMRI画像を撮影しています。遅延効果とはMRI造影剤を注射して10分以上経過してから撮影した画像で、心筋梗塞部位が白く染まります。この現象は心筋梗塞部位では心筋細胞が死んで数が減り造影剤がゆっくり広がってたまる細胞外のすきまが正常心筋よりもずっと広くなったためと考えられています。
この遅延造影の特徴のひとつは梗塞部位の検出感度の高さでわかりにくい場所にできて梗塞部位もほぼ100%見つける事ができます。もうひとつの特徴は遅延造影と実際の梗塞の大きさがよく一致することです。このことは治療判定に用いられ、カテーテル治療や手術で冠動脈の血流を改善してやれば心筋の働きの回復が期待できるとの予想を立てることができます。
心筋遅延像(長軸像と短軸像):矢印が梗塞部位
従来、心臓カテーテル検査でしか分からなかった冠動脈の走行や狭窄をある程度評価することが出来ます。心臓カテーテル検査に比べて低侵襲で体の負担が少ない検査です。
また、100%に近い「無病予測率」が心臓CTの特徴です。具体的に言うとCTで「冠動脈狭窄がない」と診断されればまず大丈夫という意味です。
当院では先にご紹介した心臓MRIでも撮影している遅延造影効果画像をCTでも撮影しております。造影剤注入から10分経過後に心電図同期下に撮影を行い、各断面を再構成し観察しております。
冠動脈CT(VR) |
CT遅延造影(長軸像) |
CT遅延造影(短軸像):矢印が梗塞部位
この検査では超音波を用いて心臓の形態、機能、血流情報を非侵襲的で短時間、かつリアルタイムで情報を得ることができる画像診断法です。心臓の形態的診断を行う断層法と血流速度を測定して心機能を評価するドプラ法があります。
心尖部四腔像(断層法) |
血流測定(ドプラ法) |
カテーテル検査というのは、足の付け根、手首、肘などにある動脈から細い管(カテーテル)を心臓の近くまで挿入し、心臓の筋肉に血液を供給している冠動脈を映し出す検査です。
その冠動脈が動脈硬化などで狭くなり血液がスムーズに流れなくなると心臓を動かす血液が不足する「心筋虚血」になります。虚血状態になると、胸部痛か胸の圧迫感を感じるようになります。これが狭心症と言われるものです。冠動脈がさらに狭くなって「完全にふさがってしまい血液が流れない」状態になると、その部分の心筋細胞が壊死してしまいます。この状態を急性心筋梗塞と呼びます。その狭くなったり、ふさがれてしまったりした冠動脈に対して血液の流れをもどすための治療にもカテーテルを利用します。
先端に風船を付けた極細のカテーテル(バルーンカテーテル)を狭くなった冠動脈へ挿入し、この風船をふくらませることで狭くなっている冠動脈も広げることができます。ステント治療もこの風船治療を応用したもので、ステンレスなどの金属でできたステントを冠動脈の狭窄部位で拡張することで病変部を治療するわけです。この手技は経皮的冠動脈形成術(PCI)と言われています。
発症直後(矢印が狭窄部位) |
PCI後 |
約1年後 |